ももたんの発達と解離ライフ

発達障害・解離性障害当事者であるももたんの声をお届けします

「見捨てない治療」が生み出す苦痛〜延命措置の現場を目撃して〜

現在、精神科病棟では患者の高齢化が進んでいると、最近思う

 

わたしが入院している病棟も、本来であれば精神疾患を持つ人が入院する、ストレスケアをメインに休息する為の病棟ではあるが、7、8割が70歳以上の高齢者、その殆どが認知症を患っていると思われる

 

中には認知症病棟でストレスが溜まり、それをきっかけにストレスケアの病棟に来た患者もいる

 

今月始めに80歳近い女性の認知症患者が、急変した

 

点滴に24時間繋がれ、座ることも出来ない

入浴時はストレッチャーで移動しオール介護

食事は流動食すら困難

 

そして、痰の吸引のような治療が毎日決まった時間に行われる

 

それも、苦痛を伴うそうだ

 

毎回看護師が処置するのだが、その患者は

「痛いよ、やめて」

「助けてよ」

と泣きながら懇願する

 

先日も20代の若い看護師が

「ごめんね、もう少しで終わりますからね、もうちょっとよ」

と励ましながら処置を施していた

 

この女性の患者は、身寄りもいないらしい

というのも、この2ヶ月半病棟が同じだが、一度として見舞客を見た事がない

また80歳近い高齢と、認知症による意思の疎通が難しい状態である

 

その厳しい現状の中、急変したご本人が延命を望んでいるのかも、恐らく判断が難しいと思われる

しかし、泣きながら懇願するその患者を見て、物凄い苦痛が生じているのは、恐らく定かである

 

何故、そこまでの苦痛を伴う治療を施しているのか

 

この病院は

「絶対に見捨てない」

ことを基本理念として掲げている

 

その基本理念を見た時、ああ、こういうことか、と思った

 

「見捨てない」ことに恐らく相当な重きを置いているのだ

 

それが、意思疎通の難しくなった患者への、苦痛を伴う延命措置・治療に繋がっているのではと思った

 

家族など身寄りがおらず、配偶者もいない(もしくはご本人を見れる状態ではない)、恐らく生活保護…。

 

そんな現状の中、患者の状況が急変してしまうと、あとは医師の判断にしか頼ることは出来ないし、看護師や他の病院スタッフも、それに従う他は無い

 

延命措置・治療とは、基本ご本人やご家族の意思を尊重する上で行なったり、止めるなりするものである

 

しかし、身寄りの無い意思疎通の難しい患者が、今回のように急変した場合は、誰の意思を尊重して治療に繋げるのだろうか

 

医師であれば、現場で苦しむ患者を救う仕事柄、ましてやこの基本理念を掲げていれば、当然のように延命措置を行うのかもしれない。看護師も然り。

 

見捨てない医療に重きを置き、それに沿った治療をしたくても、身寄りのないご本人と意思疎通をはかるのが難しい以上、もうこれは、治療をしながら患者が亡くなるその時を迎えるまで、苦痛を伴う治療は続くのだろう

 

患者に治療を施す立場の人間である医師始め、看護師はどんな思いでいるのだろう

 

先日夜、隣の病室の60代男性患者がパニック症状を発症した

苦しい、死にたくねえ、助けてください、と泣きながら叫ぶ

夜勤看護師がどうしたの、ときいても、苦しいとしか答えられない。たまたま別の階で業務を行なっていた看護長も何事かと患者に駆け寄る

 

いつも明るくて元気なのが取り柄で、もうすぐ退院するかも、とニコニコした嬉しそうな笑顔で周りに話していただけに、看護師始め看護長も驚いたようだった

翌朝元気そうな顔を見せるも、2時間も経たないうちにパニックは再発

結局医師が点滴や注射で落ち着かせるという事態にまでなった

 

人は一度急変したりしてパニックに陥ると、その時の恐怖感は簡単には消えない

結果、その時の恐怖感を引きずってしまい、再び第二第三のパニックを引き起こし易くなる

 

男性患者は早くに奥さんを亡くし、やはり身寄りが無い

妻の最期を看取ったその男性は、ふとこんなことをわたしに呟いた

 

「おれ、このままあいつみたく、ポックリ逝っちゃうのかと思ったよ…」

 

とても寂しそうな顔だったが、すぐにいつもの笑顔で

「昨日うるさくしちゃって申し訳なかったね」

と照れたように言った。その笑顔が何とも切なかった

 

その男性やわたしを担当する、若いPSWのかたと、延命措置・治療について話したことがある

その時彼女はこんな事を呟いた

 

「わたし、もう医療機関は懲り懲りですね…」

 

わたしはこう返した

 

「わたし自身、現場に実際立つことにならないと、何とも言えないけど、やっぱ見ててつらいこと、思うところはあると思う…それでも、どこかでこういう場面に立ち向かうことをある程度覚悟しなければならないのかな?と思った…」

 

彼女はうんうん、と頷いた

 

「でも…患者さんを1番側で見る密な関係でいると、感情的になったり、入り込んでしまうこと、あると思います。それで病むじゃないけど、心苦しいというか…」

 

わたしがそう続けると、彼女はこう言った

 

「そうですね…それはありますね…」

 

窓の外、降りしきる雨粒を見つめながら小さな声でそう言った彼女

 

見捨てない医療という基本理念に従ってもなお、悩みは日々尽きないのだろう

20代という、若い年齢ながらもPSWとして日々現場に葛藤しつつ立つその瞳に、うっすらと涙が浮かんでいた

 

少しの間を置いて

 

「じゃ、わたし、ちょっくら仕事戻ってきます」

 

と、いつものキリッとした笑顔で彼女は去っていった

 

終わりに…。

延命措置・治療に関しては、ご家族やご本人の中で様々なご意見があることを承知の上で、わたしという、その現場を日々目撃している患者の立場の人間が、思ったこと、感じたことを、飾ったりせず、見たまま、そのままを綴らせていただきました。現在延命措置・治療を受けていらっしゃる患者さん、また共にたたかうご家族の皆様の苦労は、わたしには計り知れないものです。患者さんの回復を心からお祈り申し上げます